ステアリングの遊びが大きいんだよな~。普通はタイロッドやアイドラーアームなんかのボールジョイントの磨耗が原因って想像するのだろうけど、古いアメ車の場合はステアリングシャフトのカップリングのヘタりが原因って事がよくある。実際のところオイラのMONACOのカップリングもガタ出ている。
ところで、オイラのMONACOは、今エンジンが降りている
→カップリング周りに十分な作業空間がある
→おまけにエンジンルームに潜り込める
→カップリングのO/H作業に、これ以上の好条件はない
→この機会を逃したらやる気がおきないだろう
→今やるしかない。
って事でカップリングのO/Hしちゃいました。
ところで「カップリング」って何??
ハンドルからステアリング・ギヤボックスはシャフトでつながっているのだが、シャフトは一本棒ではなくて、途中に何箇所かのジョイントがある。このジョイントの所を「カップリング(英語でCoupling)」って呼んでいる。直訳すると「連結器」。
モナコの場合、エンジンルーム内だけでも2箇所にカップリングがある。
「FLEXIBLE COUPLING」はゴム製で、ステアリング・シャフトからハンドルに伝わる振動を吸収するのが役目。これはGMのクルマと同じ構造だなぁ。
「POT COUPLING」は・・・・こんなカップリングGM車では見たことないぞ。
色々調べてみると、ステアリング・シャフトとステアリング・ギヤボックスとの軸ズレを吸収するためのクロスジョイントとテレスコピックの機能を持っているようだ。
普通、テレスコピックの機能はステアリング・シャフトを伸縮タイプにする事で実現して、クロスジョイント機能はユニバーサルジョイントで独立しているのだけれど、クライスラーのクルマはクロスジョイントとテレスコピックの両機能を1個のカップリングでやっている。なんか画期的???。
それにしても変な形のカップリングだ。だけどクライスラーは、このカップリングが好きらしく、80年代後半まで色々な車種で使っていたようだ。
図解するとこんな具合。
「FLEXIBLE COUPLING」はMOPARから純正部品が出ている。
薄いゴムを何層かに重ね合わせたもので、各層の間にはナイロン線のようなものが挟んである。ファンベルトの造りと同じ感じ。
「POT COUPLING」もMOPARから純正のリペアキットが出ている。
「POT COUPLING」の中は、こんな風に部品が組み合わさっている。
そんでもって、「FLEXIBLE COUPLING」から分解。
ハンドル側とステアリングギアボックス側から、それぞれ2本のボルトで固定されているだけなのだが、反対側がナットではなく、プレスの鉄板「STRAP」にメスネジが切ってあるものなので、サビで固着している。ラスペネを吹いてしばらく待ってからやったが、鉄板を1枚折ってしまった。あ~あ、また発注だぁ。部品出るかな~?。
ちなみに、ここのボルトの頭は3/8インチの12ポイント。なんで6ポイントでないの?
「FLEXIBLE COUPLING」はこんな具合に、互い違いにネジが入いる。
外した「FLEXIBLE COUPLING」。
もっとボロボロになっているかと思っていたが、意外としっかりしていた。でもゴムの弾力は既にナシ。
お次は「POT COUPLING」のバラし。
「ROLL PIN」をポンチとハンマーで打ち抜くと、ステアリングギアボックスのシャフトからカップリングが抜ける。
「COVER」はツメがカシメてあるので、ツメをドライバーでコジって「BODY」から外す。
「COVER」が外れたら、「DOWEL PIN」をポンチで打ち抜く。するとステアリング・シャフトが「BODY」から引き抜ける。
お~っと、いきなり真っ二つに折れた「SHOE SPRING」登場。
「SEAL」はご覧のとおり、ボロボロになって裂けていた。本来なら「BODY」の中はグリスが一杯に詰めてあって、「SEAL」で封してあるのだが、「SEAL」がボロボロなのでグリスが半分ぐらいしか残っていなかった。
どうやら「POT COUPLING」はエキパイのすぐ横に位置しているので、エキパイの熱でゴムがやられるらしい。
リペアキットの「SEAL」はオレンジ色の「Hi-temp orange silicone boot」なる、シリコンゴムの対策品に代わっていた。
「SHOE」はステアリング・シャフトの「SHOE PIN」に、こんな感じで付いている。
リペアキットに「SHOE PIN」も含まれているので交換。
一見、「SHOE」も「SHOE PIN」も新品と変わらないように見えるが・・・
「SHOE PIN」には段付き、「SHOE」は山になっている部分に磨耗があった。
新品は「SHOE PIN」に「SHOE」をはめた時のガタの量が明らかに少ない。(ほとんどガタが無い)
再利用するステアリング・シャフト、「BODY」等の部品はサンド・ブラストでサビ落とし。
「SHOE PIN」はステアリング・シャフトに圧入なので油圧プレスで打ち換えた。
きれいになった部品にシャシーブラックを塗り直して、リペアキットの部品を組み付け。
各パーツにグリスを塗って組んでいく。「BODY」の中はグリスでいっぱいにして「グリス漬け」の状態にする。熱の問題があるのでグリスは耐熱のものにした。
「POT COUPLING」が組みあがったら、元通り車体に組み付けて完了。
O/H前に比べてステアリングの遊びは格段に少なくなった。
今回の作業時間は何だかんだで3時間。でもエンジンを降ろしてある状態でだから、もしエンジンが積まれていたら・・・たぶん腰が折れる。