Blues Mobile Project FILE#031 ジャダーと鏡面ローター

フロント・ブレーキのお話し。

オイラのMONACOのブレーキについて気になる事が二つある。


その1:いわゆる「ジャダー」ってやつ。

ブレーキをくれると、ブレーキペダルに周期的なキックバックが出る。たぶん原因はブレーキ・ローターの歪。(国産車も含めて良く起きる症状だよ。)


その2:ツルツルのフロント・ブレーキのローター

どれくらいツルツルかって言うと、ほとんど「鏡」状態。クルマでもバイクでもブレーキ・ロータにはブレーキパッドとの摩擦でレコード盤の様な溝が入るのが普通なのに・・・・。どうも、これは鏡面化と呼ばるれる現象で、ブレーキパッドとローターの相性が悪いと、パッドがローターを削らずに、ローター表面を撫でてしまってローターがツルツルになるらしい。


別にブレーキが効かないって訳じゃないんだけど、ジャダーは何とか直したい。ブレーキ踏んでて気持ち悪い。


じゃあ、どうやって直す?

ジャダーを直す方法は、ローター交換か、今付いているローターのローター研磨。両者を比較すると・・・

・ローター交換・・・部品代US$200以上。新品ローターなので歪む可能性あり。

・ローター研磨・・・加工費1万円以下。既に歪んだローターを平らに削り直すので、これ以上は歪み難い。

よぉ~し、研磨で行こう!


でもって、研磨作業はブレーキ専門ショップの「セイワ株式会社」さんにお願いする事にした。セイワさんはローター研磨を自前の設備(旋盤みたいなヤツ)で行っていて、MONACOの様にハブ一体型のローターも問題なく研磨可能。

「な~んだ、業者にやってもらうだけじゃん」と思う人も居るだろうが、どっこいこれが結構面倒なんだよ。

ローターを研磨屋に持ち込む時の状態は

・ローター単体の状態であること(当たり前)

・ハブ・ベアリングは外した状態にする。(ベアリング・レースはハブに付いたままでOK。)

・ハブ・グリスは綺麗に拭っておく。

が基本。(研磨屋さんは自動車整備屋じゃないからね。)

だから、車体からのローター取り外し&組み付けは自分でやる作業なんだよ。 

 

それでは、作業に取り掛かるとしますかね。

下の写真は作業開始時点の状態。(床に敷いた新聞紙がローターに映り込んでいるのが分かるかな?こんなローター見たこと無い。新車のローターだってこんなツルツルじゃないよ。)

この状態からローターを外すためにサクサクとバラして行きま~す。


ハブ・キャップを外して割りピンを抜くとナット・ロック(ハブ・ナットの回り止めのワッシャー)が外れる。 


ハブ・ナットを緩める。だが、サイズがデカい(27mmのソケット)。デカいが締め付けは強くないので簡単に緩む。 


ハブ・ナットを取ると、アウターベアリングを押さえているスラスト・ワッシャーが外れる。 


キャリパーを外す。

これで、やっとローターがスピンドルから抜ける。が、ここで焦ってローターを抜くと、アウターベアリングが落ちる。先にアウターベアリングを外すなり、落ちないように押さえるなりしてからローターを抜くべし。 


ローターが外れたら、裏側のハブ・シールを外す。そうしないとインナーベアリングが抜けないんだな~。

ハブ・シールはハブに打ち込んであるので専用工具で引っ張り出す。ドライバーなんかでコジっても外せるけど、楽チン作業を望むオイラは専用工具を使う。一発でシールが外せる。 


ハブ・シールが取れると、やっとインナーベアリングが外せる。 


ローター1枚外すのに取っ払った部品がこれ。数は少ないが、グリス漬けの部品ばかり。 

グリスだらけの手でデジカメに触るわけにもいかず、部品を外す→手を拭く→デジカメ撮影→部品を外す・・・・の繰り返し。全くもってデジカメで撮るには不向きな作業。 


反対側のローターも外して、ハブに残ったグリスをふき取ったら、ローター持ってセイワさんへGo!

セイワさんは関越道の川越I.Cからクルマで10分ほど。

作業は1時間ぐらい掛かるって言われたので、ローターを預けておいて、昼飯を食べに。そんでもって近くに模型屋「K-Hobby」があった事を思い出し、クルマでウロウロ探したら、何とまだ店が在ったよ(最後に来てから15年以上経っているのでチョット感動)。そこでプラモや道具を見ていたら、あっという間に1時間以上経ってしまった。慌ててセイワさんに電話したら「作業終わってますよ」と。受け取りに戻る。


セイワさんいわく、「結構、波打ってましたよ」との事。・・・やっぱりね。 


研磨されたローターは鈍いシルバー。いかにも一皮剥きましたって感じ。


裏も同じ。


さあ、今度はローターの組み付け。

インナーベアリングのグリスをリパック。手でもできるが、オイラはグリスパッカーを使ってしまう。 


グリスをリパックしたら、ハブに入れてと。おっと、ハブの内側全体にもグリスをタップリ塗らなきゃ。 


ハブシールは新品を持っていたが、外したハブシールも1年前に新品交換したもので、その後幾らも走行してないし、シール部にも問題は無かったので再使用してしまいました。プラハンで打ち込み。 


スピンドル側にもグリスを塗布。写真だと少ないが、この後、たっぷりと塗ってます。

そうそう、バックプレートが汚かったので、一旦ナックルから外して、ワーヤーカップ&シャシーブラック。ローターを外した状態じゃないと取り外せないからねぇ。 


次にローターをスピンドルに挿すのだが、インナーベアリングとスピンドルの嵌合寸法がキッチリしていて、真っ直ぐにローターを挿さないとスピンドルに入っていかない。キャデラックはもっと楽に入ったのになぁ。ダッジは部品の精度が良いのか、悪いのか?・・・分からん。

無事にローターが刺さったら、アウターベアリング、スラスト・ワッシャー、ハブ・ナットを取り付け。


続いて作業はローターからキャリパーへ。

ローターを研磨したのでブレーキパッドも新品に交換。これ基本。

MONACOのオリジナルのパッド素材はオーガニックなのだが、今回は近代化してセミ・メタルタイプをチョイス。 


パッドは取り付け前に鳴き対策をしておかないとね。でないと後で自分が泣くよ。

ペーパーを当ててパッドの角を落としたら、キャリパーとの当たり面とパッドがスライドする時の擦動面に鳴き止めのためにパッド・グリスを塗る。オイラはWAKO'sのスレッドコンパウンドを使っている。


ブレーキパッドが新品になるとパッドの厚みが増えるから、キャリパー・ピストンを押し戻して、キャリパー内の隙間を広げてあげないとね。そうしないとパッドとローターが干渉してブレーキ・キャリパーが装着できないだなぁ。

そんな時は、こんな工具を使ってキャリパー・ピストンを押し戻す。素手でもキャリパー・ピストンをギューっ押せば押し戻せない事もないが・・疲れるよ。 


本当はね、ブレーキ・キャリパーを外す前にCクランプを使ってキャリパー・ピストンを押し戻しておくのが賢いやり方。 


ブレーキ・キャリパーを装着したら、作業中にローターに付いた油類をブレーキクリーナーで落とす。

しかし、まだハブ・ナットに割りピンが入っていませんね~。それは、このあとハブベアリングのプリ・ロード(日本語だと初期荷重かな?)の調整をするからなのです。


ハブベアリングのプリ・ロード調整は、MONACOの様にインナーベアリングと、アウターベアリングにテーパーベアリングを採用しているクルマでは必ず行う作業で、ハブ・ナットの締め付け具合でベアリングの「遊び」を調整するんだ。

ハブ・ナットの締め込み過ぎ→ベアリングの遊び不足→ベアリングが焼き付き

ハブ・ナットの締め込み不足→ベアリングのガタつき→ベアリング破損

となるので、結構大事な調整なんだぜ。GMもフォードも国産車も含めてFR車のフロント・ハブはほとんどこれだよ。


では、プリ・ロード調整しますかね。

基本はタイヤを付けた状態で

・タイヤを回転させながらハブ・ナットを締め込んでいく。

・ベアリングの当たりが徐々に強くなってタイヤの回転が重くなったかな?って所でハブ・ナットの締め込みを止める。

・一旦、完全にハブ・ナットを緩める。

・再度、タイヤを回転させながらハブ・ナットを締め込んでいく。

・締め込みに手ごたえが出てきた所で、ハブ・ナットの締め込みを止める。

・タイヤを手で揺さ振って、ハブ・ベアリングがガタつかない事を確認。

ってな感じで調整する。

オイラは気持ちキツ目にプリ・ロードを掛けるが、ほとんど「感」の世界の作業。


ハブベアリングのプリ・ロード調整が終わったら、サビ止めと&水の浸入防止のために、またグリス。 


ハブキャップの中にもグリスを詰めて装着。このあと引っ込んだキャリパー・ピストンを押し戻すためにエンジンを掛けてブレーキペダルを何回かポンピング。ブレーキペダルに当たりが出たら作業完了。

作業時間は、研磨作業を除いて3.5時間。

ね、結構面倒な作業でしょ? 

 

結果、ジャダーは見事、解消。ブレーキ鳴きも無し。スーっと止まるブレーキっていいもんだなぁ。って改めて感じたよ。 

2008.02.16 


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